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2009年4月30日 (木)

おくりびとが流した涙 を読む

 これもまた納棺師の話。僕はちょうど母の七回忌の法事を済ましてきたばかりで、そういうことから関心が抜けないせいもあるのかもしれない。槇村聡という納棺師のいろいろな感想が綴られている。納棺の仕事とはまさに一期一会を実感していく仕事である。どのような人でも一人で死んでいく訳だが、後に残された人たちとの関わりに何とも淋しいものがある。また、その生きざま、死に様には身につまされるものもあった。『親より先に死ぬということ』で町役場の職員だった孝(仮名)のことは、何とも身につまされる事例だった。50歳代での自殺である。生真面目で、公務員としての自分の職務に誠実で、常に町民のことを考え、例えば土日や公務員の時間外に住民票や印鑑証明書などの発行を制度化するべきなどの提案をしては、組織から嫌がせを受けるという、本当に誠実な人であったという。そして収賄罪に問われ懲戒解雇、そのようないきさつの中での自殺というものであった。テレビドラマ顔負けのこういう事柄は世の中には案外多いものである。率直で誠実な人であるほど、受難を受けてしまうというのも世の習いの一つなのかも知れない。そのような孝さんの遺体を丁寧に修復してあの世へと旅立たせる心境が淡々と綴られていた。このような無常観をこれからもたくさん経験していくのだろう。

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